和洋の調和的実現こそが近代の理想的な在り方ではなかったか。漱石の焦燥と龍之介の空無感の対極として在る、明治20年前後の「幻の時代」を探る。

... 漱石死後二週間以内の時点でほぼ集約的に提出されていたことをものがたる。<晩年の詩作>前項の三者三様の証言あたりを出発点として、やがて去私的漱石像が形成されてゆくのだが、晩年の弟子の一人であった芥川龍之介が、こういう「風流漱石山人」の伝説を ...

その時分の私たちというのが、なんでも先生の真似をして見ようという、随分馬鹿気きっていた時分なのである。―師・夏目漱石をはじめ、寺田寅彦、鈴木三重吉、森田草平から ...

... 龍之介研究の座談会でも、龍之介の代表作として、前期では「戯作三昧」、後期では「歯車」といふことに諸家の意見は一致したやうである。「歯車」はいふまでもなく、「戯作三昧」もさういふものの少い前期の作品では最もまともに苦悩の表情を示したもので ...

... 漱石全集」岩波書店、一九九三~九年内田百閒『私の「漱石」と「龍之介」」ちくま文庫、一九九三年長尾剛「漱石ゴシップ』文藝春秋、一九九三年高浜虚子『漱石氏と私』日本図書センター、一九八三年平岡敏夫『「坊っちゃん」の世界』塙新書、一九九二年 ...