目次
公刊によせて
序論 警備業の社会学的研究の意義
第 I 部 警備業基礎論
第1章 警備業の社会史
1-1.警備業の世界史
1-2.「世界最古」の警備業者
1-3.警備業の日本史
1-4.警備業の概況
1-4-1.警備業者数
1-4-2.警備員数
1-4-3.市場規模
1-4-4.機械警備業務の動態
第2章 警備業関連概念の整理と警備業法及び警備業務の概説
2-1.警備業及び警備業に関わる用語の概念
2-2.警備業法の概説
2-2-1.警備業法制定と改正の社会的背景
2-2-2.警備業法の概要
2-3.警備業務の概要
2-3-1.第1号警備業務
2-3-2.第2号警備業務
2-3-3.第3号警備業務
2-3-4.第4号警備業務
第3章 諸外国における警備業の概況
3-1.アメリカ合衆国の警備業
3-1-1.アメリカ合衆国における警備業の概況
3-1-2.ニューヨーク州の警備業
3-1-3.アメリカ合衆国の警備業に関する官民協働体制の拡充
3-2.イギリスの警備業
3-2-1.イギリスにおける警備業の概況
3-2-2.イギリスの警備業の特徴
3-3.ドイツの警備業
3-3-1.ドイツにおける警備業の概況
3-3-2.ドイツの警備業の概要
3-3-3.ドイツの警備業と治安の維持
3-4.フランスの警備業
3-4-1.フランスにおける警備業の概況
3-4-2.フランスの警備業の概要
3-5.大韓民国における警備業
3-5-1.韓国の警備業の概況
3-5-2.韓国の警備業の特徴
3-6.カナダの警備業
3-6-1.カナダ・オンタリオ州における警備業の概況
3-6-2.カナダにおけるアメリカ合衆国の影響と官民の融合化
3-7.オーストラリアの警備業
3-7-1.オーストラリアの警備業の概況
3-7-2.オーストラリアにおける警備業の特徴
3-8.諸外国警備業の総括
第II部 警備業の社会学的考察
第4章 社会学における犯罪予防理論と警備業の位置付け
4-1.警備業の社会学的位置付け—セミフォーマル・コントロールの視角
4-2.日本のインフォーマルおよびフォーマル・コントロールにおける犯罪予防要因の変容
4-2-1.犯罪発生率の上昇と犯罪拡散傾向による「安全神話」の崩壊
4-2-2.都市化におけるインフォーマル・コントロールの不機能化とフォーマル・コントロールの不完全性
4-3.環境犯罪学の基礎理論
4-4.環境犯罪学の限界
第5章 社会学における社会不安理論と警備業の位置付け
5-1.社会学における社会不安理論と警備業による対応
5-2.警備業による犯罪統制
5-3.警備業と警察の連携
5-4.現在における新しい社会不安と警備業の新しい動向
結論
警備業の展望と警備業研究の課題
1.失敗を「活かす」ということ
2.M&Aによる警備業界の再編・統合
3.警備学の推進と警備業研究の展開
4.人的資源としての「警備員」への着目
5.脱産業化と都市の社会的分極化における警備業
6.民営化及び民間委託の動向と警備業の展望
7.警備保障契約における苦情処理とその対策
【注】
【引用及び参考文献】
【添付資料1】 警備業法
【添付資料2】 警備業界動態表(1971〜2008年)
【添付資料3】 都市度別にみた、隣人および都市の他の人々への不信度
謝辞
前書きなど
公刊によせて
本書は、東洋大学大学院社会学研究科において平成18年度修士論文として脱稿した「警備業の社会学的研究——セミフォーマル・コントロールの視角」を加筆・修正したものである。筆者が警備業研究に着手したのは、大学生兼警備員であった2002年である。いわゆる学生警備員であり、実務に従事するなかで感じた疑問を解消したく、警備業について調べてみたのが研究の発端であった。しかし、警備業について知ろうとすればするほど、先行研究があまりに稀少であり、それだけでは筆者の疑問を解消するには至らないことを痛切に感じてきた。「警備員」という職務があり、「警備会社」という企業体が存在することは広く認知されているにもかかわらず、「謎のベールに包まれている」と言わざるを得ない実情があったのだ。そこで、筆者は大学院進学を機に、警備業研究に本腰を入れた。
2009年現在、警備業研究は俄かに活気を帯びつつある。筆者が修士号を取得した翌年以降、警備業研究で修士号を取得する者が次々と現れ、その成果が公刊されるに至った。
本書も、今後の警備業研究においてはもちろんのこと、筆者の専攻である社会学の進展に寄与することができれば、望外の喜びである。
しかしながら、本書は警備業研究の網羅性を確保したものではない。本書の基となった修士論文執筆に際して、平成18年度井上円了記念研究助成金の交付を受けた。ところが、研究の基礎となる図書・資料の購入費用が大半を占めるに至り、筆者自身による調査費用は捻出できなかった。それゆえ、一次的データによる実証性を期待する読者にとって、本書は甚だ不満足なものであるといえよう。また、本書は実務書ではなく、警備業を対象とした学術研究書である。警備業務の概説も、本論を誤解なく捉えるための予備的位置付けを担うにすぎない。それゆえ、本書に実務上の革新的知見を期待する読者にとっても、肩透かしとなるであろう。
そうであるにもかかわらず、本書を公刊する理由は、警備業研究の礎を提示したいという想いに尽きる。幸運にも筆者の修士号取得は『警備保障新聞』で紹介され、多くの方々から修士論文についての問い合わせがあり、愛読を賜った。その反響は大きく、公刊を切望する声も少なからず寄せられてきた。また、博士課程進学後の学会報告や論文執筆において多くの方々から頂戴した指摘には、修士論文で既述した論点が少なからず含まれていた。以上のような背景を踏まえ、公刊を決意した次第である。
(…後略…)