目次
第1章 知的・発達・行動障害の医学・生理学
第1節 中枢神経系の構造と機能
第2節 障害の概要
第3節 知的障害
第4節 広汎性発達障害
第5節 注意欠陥/多動性障害
第6節 発達の部分的障害
第7節 小児の行動障害
第2章 運動障害、その他の後天障害の医学・生理学
第1節 障害の概要
第2節 脳性麻痺
第3節 筋ジストロフィー症
第4節 重症心身障害児
第5節 脳血管障害
第6節 内部障害
第7節 その他の後天障害
第3章 小児期の健康障害の医学・生理学
第1節 小児の健康障害とは
第2節 アレルギー疾患
第3節 てんかん
第4節 生活習慣病
第5節 腎疾患
第6節 循環器疾患
第7節 血液・腫瘍性疾患
第8節 心身症
第9節 末期患児
第4章 視覚障害の生理学
第1節 視覚系の構造と機能
第2節 視覚障害とは
第3節 弱視レンズの基礎
第5章 聴覚障害の医学・生理学
第1節 聴覚障害の概要
第2節 やさしい音の物理学
第3節 聴覚の生理学
第4節 聴覚障害を呈する疾患
第5節 聴覚機能の測定と聴能評価
第6節 補聴器と人工内耳
第7節 聴覚障害のリハビリテーション
第8節 中枢性聴覚障害と関連障害
第6章 音声言語障害の医学・生理学
第1節 音声言語医学の概要
第2節 発声・発語の生理学的メカニズム
第3節 音声言語障害
第7章 精神障害の医学・生理学
第1節 序論
第2節 統合失調症
第3節 うつ病
第8章 高齢者の障害の医学・生理学
第1節 老化と諸機能の変化
第2節 高齢者疾患の概要
第3節 老年症候群
第4節 高齢者の疾患1
第5節 高齢者の疾患2
第6節 高齢者医療とリハビリテーション
第9章 障害理解のための遺伝医学
第1節 遺伝子と染色体・染色体異常
第2節 単一遺伝病(メンデル遺伝病)
第3節 複雑なタイプのメンデル遺伝
第4節 その他の遺伝病
第5節 遺伝疾患理解のための基礎知識
第6節 遺伝カウンセリング
索引
前書きなど
第4巻 序
障害を理解するために医学・生理学を学ぶ意義
生理学とは生命現象の機序を研究する自然科学のことであり、人体を中心としてその生命の原理を追求する基礎医学の一分野である。広い意味での生理学はヒトの形態および構造を扱う領域である解剖学anatomy、化学的な機能を扱う領域である生化学biochemistry、物理的な機能を扱う領域を扱う生物(物)理学biophysics、細胞内の微細構造を構成している分子レベルの研究領域である分子生物学molecular biology、遺伝子の解析を生理学的機能や病態に結びつけて考える研究領域である人類遺伝学humn geneticsなど幅広い学問領域からなっている。
それでは、障害を理解するために医学・生理学を学ぶ意義はどこにあるのだろうか。ヒトには個体として生存し種を保存する目的で、様々な機能が備わっている。ところが、それらの機能に関わる器官が先天的あるいは後天的な要因によって本来の機能を果たせなくなると、さまざまな障害が生じてくる。医学はこれら障害の原因を探索し、予防が可能なものは予防策を講じ、回復可能なものであれば限りなく正常な機能に回復させることを目指し、あるいは回復不可能なものに関しては、いかに二次的な障害が発生することを防ぐか、その結果として生命予後をより良いものにするか、ということを主たる目的として進歩してきた。今日、様々な障害に対する治療法が開発され、重度の障害を併せ持つ者の生命を支える技術の進歩も著しく、多くの障害を持つ人たちの平均余命は大きく伸びた。これらの人々のQOLをより一層向上させるためには、教育、療育、福祉などの異なった専門領域の包括的な支援が求められるようになってきた。さまざまな分野の専門家がより質の高い効果的な援助をする上で、対象となる障害の病態を十分に理解していることは、どのような分野においても効果的な支援を行う上では必要不可欠な前提条件であり、それぞれの分野の専門性を将来的により発展させていく上でも意義のあることである。
本書では障害を知的・発達・行動障害、重症心身障害を含む運動障害、小児健康障害、感覚障害、音声・言語障害、成人の内部障害や後天的障害、精神障害、高齢者の障害といったカテゴリーに分類し、基本的な障害の病態を理解することを到達目標とする。
2007年4月
宮本信也
竹田一則